研究概要 |
生下時は生理的に尿失禁であり成長に伴い正常な排尿形態に移行する.膀胱の収縮は主にムスカリン受容体の刺激によって生じ,尿道の収縮はアドレナリンα受容体の刺激によって生ずることは知られており,最近膀胱収縮にエンドセリン(ET)受容体が関与することが知られるようになった。膀胱尿道,特に尿道は性ホルモンが影響する組織として良く知られているので,雄ラットでは生後3週目にテストステロンの分泌が始まるため,生下時より15週まで経時的に尿道のα受容体,膀胱のムスカリン受容体およびエンドセリン受容体の量を調べた. 標本としては生後1日,1,2,3,7,15週のラット(雄)の膀胱および尿道から細胞膜を調整し,^3H-PZ,^3H-YOH,^3H-QNBおよび^<125>I-ET-1を用いて,尿道のα_1およびα_2受容体,膀胱のムスカリンおよびエンドセリン1受容体を調べた.結合飽和実験よりBmax,K_2を求めた. 尿道の^3H-PZのBmaxは生後1〜2週までは小さく,3週より大きくなり,7〜15週で最も大きかった.膀胱の^3H-QNBのBmaxは生後1日ではやや大きく,その後減少し,3週から再び上昇して7週で最大となり15週ではそれ以上に大きくならなかった.膀胱の^<125>I-ET-1のBmaxは3週以降減少した.尿道の^3H-YOHのBmaxはほとんど変化しなかった. これらの事実は,雄ラット尿道では性ホルモンの分泌が始まる生後3週あたりからα_1受容体が増加し,膀胱ではエンドセリン受容体の減少とムスカリン受容体の増加が起こることを示唆している.従って生後間もない未熟な排尿形態は膀胱のエンドセリンの増加と尿道のα_1受容体の減少に起因している可能性があり,性ホルモンの分泌と共にそれらが本来の膀胱尿道の機能に移行してゆくことが考えられた.
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