研究概要 |
【目的】インターフェロン-γ(IFN-γ)は免疫担当細胞への作用や組織適合性抗原MHCの発現の増強等,抗腫瘍免疫において重要な役割を担っている.今回,IFN-γ遺伝子をマウス膀胱腫瘍細胞株(MBT2)に導入し,遺伝子治療の可能性を検討した.【方法】ψ2細胞をウイルスパッケージング細胞として,レトロウイルスベクターによりマウス膀胱癌株(MBT2)にin vitroでIFN-γ遺伝子を導入した.G418選択を行い,IFN-γ産生膀胱癌株(MBT-2/Kγ)を樹立した.また,腫瘍内へのIFN-γ遺伝子の直接導入を試み抗腫瘍効果を検討した.7週齢のC3H/He雄マウスにday0に1.5x105個のMBT2をマウスの背部に皮下注した.マウスを対照群(8匹),Kγ群(7匹),Muγ群(7匹)の3群に分け,day1,2,3に生食,IFN-γの遺伝子を含むウイルス培養上清ψ2(Kγ),ψ2(Muγ)を各々0.1mlずつ,MBT2を移植した部位へ皮下注した.腫瘍はその後経時的に計測した.【結果】MBT-2/Kγは14U/ml/106cellのIFN-γを産生している事をbioassayにより確かめた.FACS解析により,MBT-2/KγのクラスIMHC抗原の発現はMBT2に比較して増強していることが示された.MBT-2/Kγをマウスに皮下注しても腫瘍形成は認められず,このマウスは親株MBT2を拒絶し,MBT-2/Kγは抗腫瘍ワクチンの作用のあることが示された.しかもこの免疫は特異的であり,CD8(+)T細胞が免疫応答に関与していることが示唆された.腫瘍内へのIFN-γ遺伝子の直接導入実験では,腫瘍形成率は対照群:8/8(100%),Kγ群:4/7(57%),Mu群:3/7(43%)でありMuγ群では対照群に比較し,有意に腫瘍形成率は減少した.腫瘍形成の時期もKγ群,Muγ群では対照群に比較して優位に遅延した.実測生存期間もKγ群,Muγ群ともに生存期間の延長が認められ,特にMuγ群では有意に生存期間が延長した.【結論】IFN-γ遺伝子を腫瘍細胞に導入し,特異的免疫反応を引き起こすことにより遺伝子治療が可能であると考えられた.
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