研究概要 |
尿路上皮癌において、従来の病理組織学的な悪性度の評価では不十分な症例がしばしば観察されるため、より的確な悪性進展に関わる遺伝子変化の検出を確立し、これを臨床の場に応用することを目的とし、研究を進めてきた。 1、癌抑制遺伝子の不活化の際に生じる対立遺伝子の欠失、またはヘテロ接合性の消失を様々な病期、異型度の尿路上皮癌においてサザンブロット法により調べ、染色体11p、17p、13q等での癌抑制遺伝子の不活化が尿路上皮癌の悪性進展に関わっていることを示した。この中でも17pの変化が最も悪性度を反映する所見を得た。 (Int.J.Cancer,53:579-584,1993)(第81回日本泌尿器科学会総会シンポジウム、平成5年4月、京都) 2、染色体17p上に位置する癌抑制遺伝子p53遺伝子に的を絞り、尿路上皮癌においてPCR法を用いてp53遺伝子の変異が悪性進展に深く関与していることを示した。さらにp53遺伝子の変異パターンが患者の喫煙歴により違いが生じることを示し、従来疫学的に示されていた喫煙と尿路上皮癌の関係を分子遺伝的に示した。 (Cancer Res.,53:3795-3799,1993)(第81回日本泌尿器科学会総会、平成5年4月、京都) (第52回日本癌学会総会、平成5年10月、仙台) 3、尿路上皮癌におけるp53遺伝子の解析を進め、尿路上皮癌の際だった特徴である異時性、異所性の多発発生が多くの例で尿路内の播種により生じることを証明し、denovoの発生により多発するという可能性が少ないことを証明した。(Lancet,342:1087-1088,1993) 現在この尿路内播種を規定する遺伝子変化を捉えることを目的に研究を進めるとともに、尿路上皮癌のp53遺伝子の変化と悪性進展について研究を進めている。
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