膀胱癌にて膀胱全摘除術を行なった20症例(男性18例、女性2例。平均年齢69.5歳)で膀胱体部正常部より平滑筋条片を作成し、これを37℃で酸素化したKrebs-Henseleit液を満たしたオーガンバス内に懸垂し、アセチルコリン収縮、KCl収縮、CaCl_2収縮、経壁電気刺激収縮に及ぼす各種抗コリン剤の影響を、等尺性トランスデューサーを介して記録した。 その結果、アセチルコリン系収縮では、アトロピン(10^<-9>〜10^<-6>M)、プロピベリン(10^<-7>〜10^<-5>M)、オキシブチニン(10^<-8>〜10^<-5>M)、テロジリン(10^<-7>〜10^<-5>M)による前処置は、それぞれ容量依存性にアセチルコリンによる収縮を抑制し、その抑制効果は、アトロピン>オキシブチニン>プロピベリン=テロジリンの順であったこれに対してKCl収縮系では、プロピベリン、オキシブチニン、テロジリンは10^<-6>〜10^<-4>Mでそれぞれ容量依存性に抑制効果を示したが、アトロピンは10^<-4>〜10^<-3>Mの高濃度で部分的な抑制効果しかみられなかった。プロピベリンの最大抑制率は92.9±7.4%とテロジリンとほぼ同等で、オキシブチニン(78.8±6.5%)に比べて有意に高値であった(抑制効果はプロピベリン=テロジリン>オキシブチニン》アトロピンの順)。CaCl_2収縮でも同様の傾向が認められ、最大抑制率はテロジリン98.5±0.8%、プロピベリン89.0±4.7%で、オキシブチニン(68.9±2.2%)、アトロピン(44.8±12.0%)より高値を示した。また、経壁電気刺激激収縮系では、プロピベリンとテロジリンが容量依存性に収縮を抑制し、10^<-4>Mでほぼ完全に収縮は消失した。一方、アトロピンとオキシブチニンも収縮を容量依存性に抑制したた、最大抑制率はそれぞれ72.3±10.4%、51.3±3.6%であった。 以上の結果より、プロピベリン、テロジリン、オキシブチニンはアトロピン類似の抗コリン作用を有しヒト膀胱平滑筋収縮を抑制するが、アトロピン抵抗性収縮も抑制することより、カルシウム拮抗作用など平滑筋への直接作用をもつことが示唆された。
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