研究概要 |
ヒト腸内細菌より蓚酸分解菌を分離し、その菌体より蓚酸分解酵素を精製する試みを続けている。蓚酸分解活性を示す菌体より蓚酸分解酵素を部分精製したことはすでに報告した。しかし、この場合は数種類の菌の混合したものが活性を示したのであって、一つの菌の純粋培養には成功していなかった。今回はまず、活性を有する菌の純粋培養を試みた。この混合培養物をBarber培地から蓚酸を除去した培地に継代し、ペニシリンの共存下で3〜4日間培養することにより蓚酸分解菌の濃縮を行なった。この菌をBarber培地の改変寒天培地にプレーティングし、3〜4日間培養した。生育してくるコロニーを釣菌し、Barber培地で培養し、蓚酸分解活性を有する菌を得た。この菌は好気条件下では生育せず、嫌気条件下でのみ生育した。本菌は桿菌であり、グラム染色によりグラム陽性菌であった。また、芽胞形成はみられなかった。嫌気性菌の同定キットによる検査でEubacterium lentumと同定された。 本菌を大量に培養し、あらためて、その菌体よりの蓚酸分解酵素の精製を試みた。菌体を9倍量のリン酸緩衝液に懸濁させ、超音波処理を行い、遠心上清を粗酵素液とした。蓚酸分解活性の発現のためにはcofactorとして、コハク酸、ATP,CoA,TPP,Mgイオンを必要とし、このうちのどれが欠けても活性は消失した。硫安50-60%飽和で分画し、その後にButyl-Sepharoseクロマトグラフィーをおこない活性分画を得た。活性画分をさらにDEAE-Sepharoseクロマトグラフィーにかけると活性は失われた。これらのことより、2つの酵素により蓚酸分解が行なわれることが示唆された。したがって、今後はoxalyl-CoAをつくらせる酵素とoxalyl-CoA decarboxylaseとを別々に精製してゆく予定である。
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