研究概要 |
1.未治療腎細胞癌患者93症例から治療前に末梢血を採血し、NIH Standard Plateを用いて、細胞毒試験を行い、T‐cellsより主要組織適合抗原(MHC)class I抗原を、B‐cellsよりMHC class II抗原を同定した。対照として11th International Histocompatibility Workshop(1991)に明らかとなった健常日本人の各抗原発現率を用いた。その結果、腎細胞癌に発現の高かった抗原は認められなかった。一方、腎細胞癌に有意に発現の低かった抗原としてMHC class Iでは、A26,B35,Bw60が、MHC class IIでは、DRw6,DRw8,DR9が認められた。特にBw48抗原は腎細胞癌では1例も存在しなかった。従って、これら腎細胞癌で有意に発現の低かったMHC class Iの4抗原はMHC‐restriction moleculeとして腫瘍関連抗原と親和性が高く、かつ自己の免疫担当細胞がtargetを認識する上で重要な抗原となる可能性が示唆された。また同時に、腎細胞癌に有意に発現の低かったMHC class IIの3抗原は、抗原提示細胞上に発現する抗原としてsignal伝達の上で重要な抗原となる可能性が示唆された。 2.haplotypeについて検討した結果、腎細胞癌では、A24‐Bw52‐DR2、A24‐B7‐DR1、およびA2‐B35‐DR4の3種類のhaplotypeが有意に高く発現していた。従って、これらhaplotypeは腎細胞癌と何等かの疾患関連例を有することが示唆された。 3.予後との関連を検討した結果、術後早期に再発した症例や、早期に癌死した症例は、腎細胞癌に有意に発現の低かった7抗原(26,B35,Bw48,Bw60,DRw6,DRw8,DR9)はいずれも発現が低かったことから、これら抗原は腎細胞癌の予後とも関連するmarkerと考えられた。
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