研究概要 |
1)PTHrP(PTH関連蛋白)の正常生殖器における発現おのび作用の検討 遺伝子発現およびPTHrP蛋白の局在について検討をした。 (a)子宮内膜、脱落膜、絨毛、卵管、卵巣、子宮筋、卵膜(羊膜、絨毛膜),妊娠初期および妊娠中期の胎児組織よりmRNAを抽出しRT-PCRにより、PTHrPの遺伝子発現を検討した.PTHrPの遺伝子発現は子宮内膜、脱落膜、絨毛、卵管、卵巣、子宮筋、卵膜および胎児の肝臓、腸、皮膚に見られた. (b)ホルマリン固定した、正常子宮内膜、脱落膜、卵膜を用いてC端(109-141)を認識する抗体を用いた免疫染色(ABC法に準じた)によりPTHrPの局在を検討した.PTHrP蛋白は子宮内膜では内膜腺細胞、脱落膜では内膜腺細胞および間質細胞、卵膜では絨毛膜細胞、脱落膜間質細胞、絨毛では合胞体細胞に局在が認められた。 (c)乳汁中に高濃度に含まれるPTHrPは産褥婦血中に移行する. (d)羊水中のPTHrP濃度は妊娠中期で高値となる.また、奇形児、羊水過多症におけるPTHrP濃度は正常児のそれと異ならなかった.しかし、致死性四肢短縮小では低値であった. (e)卵胞液中にPTHrPが高濃度に含まれるか卵胞液は多量のPTHrPを含む. (f)SDS-PAGEでは正常組織中のPTHrP分子は多様である。 (2)高Ca血症を伴わない卵巣腫瘍におけるPTHrPの遺伝子発現と患者血清中および腫瘍内容液中のPTHrP. (a)PTHrP測定の意義.術前良性卵巣腫瘍(34例)、悪性卵巣腫瘍患者(27例)の血清、腫瘍組織(悪性10例、良性5例)、腫瘍内容液あるいは癌性腹膜炎の腹水(良性-14例、悪性-14例)中のPTHrP濃度を測定した.血清中のPTHrP値は正常コントロール(45例)のM+2SD,38.5pmol/L以上を高値とする良性群では5例(16%)に軽度高値例が見られた。一方悪性群では10例(37%)は高値例が見られた.これらの高値例はいずれも術後正常値となった.腫瘍内容液中に、PTHrPは良性、悪性卵巣腫瘍でいずれも検出された.特に500pmol/L以上の高値例は悪性群で5例(35%)良性群では1例(7%)に見られた.よって、卵巣腫瘍の腫瘍マーカーとして有用であると考えられた。 (b)PTHrP遺伝子発現は良性、悪性卵巣腫瘍組織のいずれにも見られた。
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