研究概要 |
E cadherinが卵巣癌,子宮内膜癌において癌抑制遺伝子,あるいは癌転移抑制遺伝子の候補である可能性を検討するため卵巣癌26例,子宮内膜癌50例についてそれぞれの癌組織,正常組織よりDNAを抽出し,PCR-microsatellite解析を行い,染色体16q12.1より16q24.3までの10個の領域について染色体欠損を検討した。卵巣癌において15例(58%)で染色体16qに欠損を認めた。最も高頻度であった領域はD16S450(16q22.1)で56%(10/18)であり,ついでD16S390(16q12.1-12.2),47%(9/17)であった。これらの領域の共通欠損が認められた症例が多かったが,その間の領域が欠損していない症例も認められた。臨床病理学的には染色体16qの欠損は漿液性嚢胞腺ガンに多く認められ,しかも復腔内散布病巣を持つ進行癌に多い傾向が認められた。子宮内膜癌では染色体欠損の頻度は42%(21/50)であった。卵巣癌における場合と同様にD16S450領域とD16S390領域に欠損が高頻度に認められ,それぞれ44%(16/36)と35%(13/37)であった。 ついでE cadherinに対する抗体を用いた免疫組織化学染色を卵巣癌,子宮内膜癌でそれぞれ15例施行した。非癌部での染色性を対象として細胞間接触部に染色陽性,heterogenousな発現,発現なしの3種類の染色態度にわけられた。hiterogenousな発現,発現なしのものを発現減弱とした。卵巣癌では漿液性嚢胞腺癌のほとんどのものが発現減弱を認めた。内膜癌では組織分化度の低いものに発現減弱を認めた。 E cadherinが存在する染色体領域(16q22.1)は卵巣癌,子宮内膜癌において高頻度に欠損し,E cadherinの発現減弱が高頻度に認められたためE cadherinはこれらの癌における癌抑制遺伝子の候補である可能性が示唆された。さらに16q12.1-12.2も高頻度に欠損が認められたため,この領域にも癌抑制遺伝子の存在が示唆された。
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