研究概要 |
正常子宮筋および子宮筋腫におけるgonadotropin releasing hormone(Gn-RH)receptorの存在の有無を調べるため子宮筋腫の診断にて手術によって得られた正常子宮筋および筋腫組織をautoradiographyの手法を用いて検討した.Gn-RH analogue(Gn-RHa)として^<125>I-Buserelinを用いた.なお,コントロールとしてはラット下垂体前葉および海馬を用いた.ラット下垂体前葉および海馬に^<125>I-Buserelinのspecific bindingを認めた.しかしながら,正常子宮筋および筋腫いずれにおいてもbinding activityは一定せず,^<125>I-Buserelinのspecific bindingの確証は得られなかった.さらにpreincubation time,incubation timeやincubation temperatureなどの条件をいくつか変えincubation assayを行ったが,specific bindingを見出せなかった.したがって,正常子宮筋および筋腫にGn-RHreceptorの存在を証明することはできなかった. 次に子宮筋腫に対するGn-RHaの直接効果の有無を検討するため,子宮筋腫培養細胞を用いてGn-RHaの細胞増殖能に対する影響と筋腫細胞縮小効果または細胞毒性の有無について検討した.35mmシャーレで1x10^5個の筋腫細胞および正常子宮筋細胞を各種濃度のGn-RHaを添加した培養液で培養し,経日的に2週間,細胞数および蛋白量を測定した.細胞数および蛋白量は,GnRHaのどの濃度においてもGn-RHaを添加しない群と比べて有意な差は認めなかった.したがって,子宮筋腫および正常子宮筋の培養細胞の増殖能に対してGnRHaの直接効果はないものと推察された.さらに35mmシャーレで筋腫細胞および正常子宮筋細胞を培養し,約1週間後confluentになったものに各種濃度のGn-RHaを添加し,経日的に2週間,細胞数および蛋白量を測定した.細胞数,1シャーレあたりの蛋白量および蛋白量を細胞数で除した1細胞あたりの蛋白量は,GnRHa無添加群と比べて全く有意差は認めなかった.したがって,Gn-RHaの直接的な細胞縮小効果または細胞毒性は無いもの考えられた.以上の結果より子宮筋腫のGnRHaによる縮小効果は,GnRH receptorを介した作用ではなく,また,GnRHaの筋腫細胞への直接作用でもなく,estrogen低下などによる間接的作用によるものと推察された.
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