研究概要 |
【目的】Human T lymphotropic virus type 1(HTLV)の母児感染における胎児 胎盤の感染防御機構をみる。 【方法】HTLV-I carrier mothersの胎盤,臍帯血へのHTLV-I感染の有無をImmunohistochemistry,polymeras chain teaction法を用いたHTLV-I provirus genome検出法で調べた。また胎盤におけるアポトーシスをTerminal dcoxynucleotidyl transferase mediated dUTP nick end labelling法で調べると共に,胎盤絨毛のCD8陽性細胞CD14陽性細胞 CD68陽性細胞の有無をImmunohistochemistryで調べた。さらに胎盤絨毛細胞のHTLV-I感染細胞との共培養(感染実験)を行った。また臍帯血リンパ球をEpstein-Barr virus(EBV)でtransformし,胎児による抗HTLV-I抗体産性能をみた。 【結果】16例のHTLV-I carrier mothersから得られた胎盤のうち,8例でHTLV-I感染が認められた。しかし,臍帯血へのHTLV-I感染は1例も認められた。HTLV-Iに感染していた胎盤では非HTLV-I carrier mothersの胎盤に比べ,アポトーシス陽性の細胞数が有意に多かった。またCD8陽性細胞CD14陽性細胞 CD68陽性細胞が胎盤絨毛に認められた。胎盤絨毛細胞とHTLV-I感染細胞との共培養で,胎盤絨毛細胞はHTLV-Iに感染することが示され,また胎盤マクロファージ様の細胞によるHTLV-I感染細胞の貧食が観察された。臍帯血リンパ球のEBV transformationにより胎児には抗HTLV-I抗体産生能があることが示された。 【結論】HTLV-Iは胎盤には感染するが,臍帯血リンパ球への感染は起きにくいことが示された。胎盤におけるCD8陽性細胞及びマクロファージに関連したアポトーシスが胎盤でのHTLV-I感染の拡大,胎児への感染阻止に働いている可能性が示唆された。また胎児自身にもHTLV-I垂直感染を阻止する機構があることが示唆された。
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