研究概要 |
(1)細胞内プロティンキナーゼ(PKC)活性剤である12-0-Tetradecanoyl phorbol acetate (TPA)は2008細胞においてDDPの誘導体であるカルボプラチン(CBDCA),254-Sに対する感受性をそれぞれ2.8±0.0(P<0.01),2.3±0.7(P<0.01)倍増強させ,TPAの薬剤感受性増強作用は,DDP,JM-8,254-Sの白金製剤に共通する機序によるものと考えられた。(2)TPAはDDPに11倍の薬剤耐性を有する2008/C13^*5.25に対しても,CDBCA,254-Sの感受性を増強させ耐性克服の可能性が強く示唆された。(3)TPAはDDP,CBDCAの細胞内濃度に変動をきたさなかった。(4)TPAは2008,2008/C13^*5.25のいずれにおいてもグルタチオン(GSH)濃度,細胞内メタロチオネイン(MT)濃度を変化させず,GSHおよびMTはTPAの薬剤感受性増強能とは無関係であると考えられた。(5)これらの白金製剤に共通するcarrier-ligandを有せぬDWA2114R(DWA)につき検討をすすめたところDWAは上記3者(DDP,JM-8,254-S)と異なりDDP耐性2008/C13^*5.25細胞が2008より高い感受性を示した。(6)TPAは2008のDWA感受性を変化させることはなく,更に2008/C13^*5.25ではTPA添加によりDWA耐性をもたらした。上記3者に対するTPA作用とは全く異なるパターンを示し,2008と2008/C13^*5.25の間ではじめてTPAの反応性に差異を認めた。(7)PKC Isotypeの解析では2つの細胞にはPCKαとPKCβの2typeを同様に認めるのみで両者に差はみられなかった。(8)PKC活性剤のなかで生体応用可能なTNFαを用いin vitroにおいて2008,2008/C13^*5.25細胞内のPKC活性化と約2倍のDDP感受性増強能を確認した。(9)ヌードマウスによるin vivoの実験ではTNFαは100μg/kg投与量で全身毒性を来さず,DDPの抗腫瘍効果を増強し,TNFα,DDP併用療法による有意の延命効果を認めた。
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