研究概要 |
私共はGratzner氏法によるBrdU(5Bromo-2′-deoxy Urine)のモノクロナール抗体を用いて,扁桃の胚中心の細胞動態を免疫組織学的に観察し報告してきた。DNA合成期の細胞分裂S期にThymidinのAnalogeであるBrdUを取り込ませ,抗BrdUモノクロナール抗体で免疫染色し,BrdU摂取細胞を標識細胞として扁桃胚中心の細胞動態を観察した。家兎の扁桃ではBrdU標識細胞は大型リンパ球であり,胚中心の暗殻の対側である底極部に限局してみられ,この部でリンパ球の産生,増殖がおこなわれていた。そしてBrdU投与後,経時的に観察すると,BrdU摂取細胞は暗殻に向って移動し,胚中心の外へ移動する。ヒトの口蓋扁桃を用いて,in vivoのBrdU投与実験をおこなった。手術摘出扁桃を材料に用いた。扁桃組織をBrdU含有の人工血液(Fe-43,ミドリ十字社製)の中で培養した。試料はアマシアム社製の抗BrdUモノクロナール抗体キットで免疫染色し,BrdU摂取細胞を観察した。ヒトの扁桃の場合もBrdU摂取細胞は胚中心の暗殻の対側である底極部に多数観察され,この部がリンパ球の産生・増殖の場であることが理解された。そこで底極部の機能を知るため,今回S-100蛋白の免疫染色をおこなったところ,底極部にS-100の存在が認められた。S-100は主としてリンパ球をとりまく,dendritic cellにみられた。この細胞はリンパ節のinterdigitating Reticulum細胞に相当する。しかし底極部以外では反応が少なかった。さらにリンパ球産生に関与するインターロイキン6で免疫染色するとS-100の所見とほゞ同じ結果がみられた。胚中心の底極部にリンパ球産生・増殖の機能についてさらに検討したい。今回の結果は第6回日本口腔咽頭学会(平成5年9月)で発表予定である。
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