研究概要 |
紫外線の白内障形成機序に関しては活性酸素の関与が指摘されており、これまで多くの研究がなされている.今回の研究では水晶体の主要な環境である房水の酸化反応系に対する紫外線の影響についても検討したところ,次のような興味ある結果が得られた. 1.紫外線の房水アスコルビン酸(AsA)に及ぼす影響 1)ブタ眼から採取した房水に,紫外線のUV-C(254NM),UV-B(312nm),UV-A(356nm)を30分間照射して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析・定量したところ,UV-C,UV-Bの照射ではアスコルビン酸の総量(酸化型,還元型)が低下しており,前者では特に著明であった. 2)紫外線のUV-B,UV-Aをそれぞれ家兎の両眼に10分間照射した後の房水を採取してAsAの定量をした結果,照射後6時間までは,変動はなかったが,1日後以降では著明に低下した.その低下は照射後3週間まで継続し,その低下はUV-Bの方が著明であった. 2.太陽光の血液房水柵に及ぼす影響 有色家兎眼に戸外で太陽光を2〜10分間照射して,血液房水柵の破錠によって生じる蛋白フレアをレーザーフレアセルメーターで測定した.このような短時間でも有意に房水フレア値は一増加し,太陽光によって血液房水柵の破錠が生じることが分かった. この結果は紫外線による白内障形成における活性酸素の役割を考える上で重要な所見と考えられた.
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