研究概要 |
先ずこの研究の基盤となる動物眼での角膜上皮形成術を確立した。即ちラットを用いて角膜上皮を剥離し,摘出眼球より作成した上皮の付いた角膜上層切片を逢着した。同系ラット間での移植例(DAラット→DAラット)では移植上皮は逢着後4日目では上皮浮腫をみとめたが,その後浮腫は減じ7日目以降30日以上生着し続けた。これに対し異系ラット間での移植例(DAラット→FISHERラット)では移植上皮は逢着後4日目までは同系間移植群と変わりはなかったが,7日目では上皮浮腫は増悪し30日めには移植片のほとんど全てが拒絶され脱落した。次に異系ラット間の群にあらかじめ移植片と同じラットのリンパ球を動物の前房に注入し,7日後に移植を行った。その結果異系間での移植にも関わらず,前房に前処置をした群では術後30日以上経っても拒絶は見られず,前房関連性免疫偏位(ACAID)は角膜上皮形成術に対して有効であった。また前房に異系ラットリンパ球を注入した後7日目に脾臓リンパ球を取り,同系ラットに静注した後に異系ラット角膜片を移植しても同様にACAIDは誘導され,拒絶反応の抑制が見られた。またマウスを用いて同じ様な実験を行い,やはりACAIDは誘導された。以上のことからACAIDは角膜上皮形成術においても効果的な免疫学的拒絶反応の抑制力を持つことが解明された。次年度には種々の系のマウスを組み合わせて主要組織適合抗原(MHC)の色々な組合せ群を作り,同様の実験を継続していく。一部の実験はすでに開始しているが,現時点では一定の法則に乗った実験結果は出ていない。
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