研究概要 |
本年度は、従来からの分散型のレーザーラマン分光器を用いる研究のほかに、新しい近赤外励起フーリエ転換(FT)ラマン分光器を用いた。この装置はレンズ表面にレーザー光を照射するやり方で表面近くのラマンスペクトルが測定される。従来型のラマン分光法でSCRラット白内障では、水晶体核を中心に水晶体たんぱく質のS-S結合が減少していたが、FTラマン分光法では水晶体表面からのスペクトル上には異常は見いだせなかった。が、SCR白内障水晶体を分割して水晶体核を調べてみるとS-S結合の減少が確認された。同時に行なったAKR bs/bsマウス白内障ではチロシンのピークが他に比べ異常に低く、たんぱく質のチロシンが減少していていることを示唆している。このようにFTラマン分光法も白内障研究に有用であることが分かった。生化学的研究ではalpha,beta,gamma‐の三種のクリスタリンと26Kたんぱく質のポリクローナルとモノクローナル抗体を作成を試みた。beta,gamma‐クリスタリンの抗体は特異性と抗体価とも使えるものが得られた。対角線二次元電気泳動法でたんぱく質の分子間S-S結合が著しく減少していたが、そのたんぱく質の一部はgamma-クリスタリンであることが免疫染色法で同定された。SRCラット水晶体からメッセンジャーRNAを分離抽出して、試験管内で赤芽球からのライセイトでたんぱく質合成を行なわせると、gamma‐クリスタリンが著しく合成されにくいという変化が認められた。さらに二次元電気泳動したプレート上で正常では見られないスポットにつき免疫染色を行なったところ、異常なスポットはbeta‐クリスタリンと反応するかとが分かった。 SCRラットとは別に新たな優勢遺伝を示す遺伝性白内障ラットUPLを発見、系統を確立すべく開発中である。そしてラマン分光学的に解析を進めている。
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