研究概要 |
アレルギー性結膜炎,ドライアイなどオクラーサーフェスの慢性炎症性疾患の病態を解明する目的で結膜局所に浸潤している炎症細胞の定量的解析およびPCR法およびELISA法を用いたサイトカイン発現の検索を行った。 1.炎症細胞の定量的解析 アレルギー性結膜炎およびドライアイにおいて結膜炎の重症度に伴い結膜上皮内の好中球の比率が高くなる傾向がみられた.また,スギ花粉症に対し,抗アレルギー点眼薬(フマル酸ケトチフェン)を花粉飛散期2週間前から開始した群では,花粉飛散期に投与を開始した群に比べ結膜上皮内の好中球の出現頻度が低く,これは臨床症状のスコアによく一致し,スギ花粉症に対し抗アレルギー点眼薬の季節前予防的投与の有効性を示した. 2.PCR法を用いたサイトカイン発現の検索 眼局所における炎症細胞浸潤のメカニズムを解明する目的でブラッシュサイトロジーにより結膜から採取した細胞に対してRT-PCR法を用いてサイトカインの発現を検討した.重症のドライアイを呈するシェ-グレン症候群では、結膜上皮内にインターロイキン2のmRNAの発現がシェ-グレン症候群以外のドライアイに比べ高率にみとめられた。また、インターロイキン6のmRNAはシェ-グレン症候群にのみ認められた。正常コントロールではいずれの発現もみとめられず、シェ-グレン症候群の結膜上皮では炎症性サイトカインの発現の上昇が確認され、唾液腺や涙腺と同様な炎症のプロセスが結膜局所にも存在する可能性が示唆された。 3.ELISA法を用いたサイトカイン発現の検索 喘息患者の血管から粘膜局所への炎症細胞の浸潤に重要な役割を演じているケモカインのRANTESが、アレルギー性結膜炎患者の涙液中にも存在するか否かをELISA法により測定した。正常コントロールに比べアレルギー性結膜炎患者では、涙液中RANTESの陽性率は高く、アレルギー性結膜炎において結膜局所への好酸球、Tリンパ球の浸潤にRANTESが関与している可能性が示唆された。
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