研究概要 |
小児固形悪性腫瘍のうちで最も頻度の高い神経芽種は,集学的治療の導入にも拘わらず,1歳以上進行症例は予後はいまだ不良である.従って,その発癌のメカニズムの解明が急がれている.神経芽種に関しては1歳以上の進行症例ではN-myc癌遺伝子の増幅は認められるが,1歳未満の予後良好例では進行症例であってもN-myc癌遺伝子の増幅は認められない.1歳未満症例の腫瘍においてどのような遺伝子の欠失ないし突然変異がおこっているかはいまだ明らかでない.本研究の目的は,神経芽種について(1)H-ras癌遺伝子の増幅,発現および点突然変異(2)癌抑制遺伝子であるp53遺伝子の発現および点突然変異の有無を検討し,神経芽種の発生,進展に関する遺伝子を明らかにすることであり,大阪大学小児外科および関連施設で経験した神経芽種に関して以下の検討を行った. Ha-rasの遺伝子産物であるp21の発現を検討したところ,予後良好である早期症例および1歳未満症例に発現が見られるのに対し,1歳以上の進行例では発現が認められず,この結果は成人の腫瘍と反対である.現在このp21の発現が遺伝子の変異に起因するものかどうか検討中である. 癌抑制遺伝子のひとつであるp53の発現に関しても,免疫組織染色では発現頻度は5.9%と低率であり,PCR-SSCP法では明らかな点突然変異は認められなかった.以上の結果より,神経芽種の悪性化にはp53の関与は低いものと考えられた.
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