研究概要 |
(1)前年度には、Porphyromonas gingivalisから、他菌種由来のプラスミドを用いたときでも形質転換が可能な「制限酵素非保有変異株」を得る試みを行い、親株(野生株)としてLS95株を用いてその種の変異株を分離することができた。しかし、その後の研究で、LS95株は発育が極めて悪く形質転換体(集落)が出現するまでに2週間を要するなどのことから、実験に利用しやすい変異株の再分離を行った。その結果,SU60を親株とする新しい変異株を複数分離することができた。それらはいずれも発育良好で、今後の形質転換実験に使用するのに適した菌株であった。 (2)従来、P.gingivalisに伝達可能であることが知られているプラスミドはpE5-2ただ一種であるが,同プラスミドはP.gingivalis中では極めて不安定であり、短時間のうちに脱落する。そこで、前述の変異株の一つのYH522を受容菌として、P.gingivalis中で安定に複製されるプラスミドを探す試みを行った。その結果、P.gingivalisと近縁の黒色色素産生嫌気性菌であるPorphyromonas asaccharolyticaから発見されたプラスミドのpYHBA1に選択マーカーとしてエリスロマイシン耐性フラグメント等を付加して作成した組換え体プラスミドであるpYH400がP.gingivalisに形質転換法で伝達が可能であることが明らかとなり、また、同プラスミドはP.gingivalis細胞中で極めて安定に保持されることも判明した。以上のことから,本研究課題の当初の目的は果たせたと思われ、今後は、同プラスミドの構造の解明、構造変更を行った上でP.gingivalisの遺伝学に利用可能なクローニングベクターとして実際的な応用を行う計画である。
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