研究概要 |
SD系のラットの背部皮下組織内に埋入した各種のリン酸カルシウム系の化合物の異物(HAP,TCP,BP)に対して出現した多核の異物巨細胞の細胞性格を酵素組織化学的(ACP、TRAP,CCAP,CCTP等)細胞性格につき経時的に検索した.その際の対照としてコレステリン粉末を用いた.その結果,異物巨細胞は単核のマクロファージが癒合合体によるものと細胞質の分裂を伴わない核分裂によっても成立することを明らかにした.さらに,各種の酵素活性の強度変化について,画像解析装置を用いて埋入時から最大4週後まで検索した.その結果,陽性率は,HAPTCP,BPCHOL群の順であり,各群間には危険率1%で有意差が認められた.また,各種の酵素活性の出現は,埋入後1週から起こり,その極大値はそれぞれ2週から4週まで埋入異物によって異なっていた.すなわち各群における強度の経時推移では,HAPでは2週,TCPでは3週,BPでは4週CHOLでは1週でそれぞれ極大を示した.さらにそれぞれによって,その陽性の強度も異なっていた.これらは,増殖した異物巨細胞の細胞性格の多様性を示唆しており,これは貧食対象となる物質の大きさ,形状,溶解性,などの物理化学的諸性質に関連するものと考えられた. 今回検索したHAP,TCP,BP等の燐酸カルシウム系の化合物に対して,さらにCHOLに対しても僅かではあるがTRAP陽性細胞が出現していたことから,一般的に破骨細胞のマーカーと考えられているTRAPも完全なものではないことが示された. 以上の検索結果から,今回検索したHAP,TCP,BP等の燐酸カルシウム系の化合物に対して出現した多核巨細胞の病理学的な位置づけについて,たとえ破骨細胞に酷似した細胞性格を示したとしても,基本的には異物巨細胞としての範疇に入るものと認識された.
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