研究概要 |
学童期の小児4人から分離したpenicillin G(PCG)耐性菌57株を使用した。供試菌に対するPCGの最小発育阻止濃度(MIC)は分離当時100ug/mlであった。菌株の同定は生化学的性状,API ZYMの酵素活性パターンおよびDNA相同値を用いて行った。その結果,Prevotella melaninogenica,P.loescheii,P.denticola,P.intermediaおよびP.sp.と同定された。 供試菌のbeta-lactam剤耐性機構を解析するために,まずbeta-lactamase活性をミクロヨード法でampicillin(ABPC)とcefazolin(CEZ)を基質として測定した。beta-lactamaseが耐性に主として関与する範囲をbeta-lactamase活性30mU/ml以上・MIC50ug/mlとして,そこに分布する菌株の割合を求めた。その割合は症例によって異なり,PCGで17〜57%,ABPCで0〜61%,cefaclor(CCL)で50〜83%,CEZで0〜57%,aztreonamで050%であったが,cefmetazole,latamoxef,cefteram-pivoxil(CFTM-PI)ではこの割合は低かった。また,imipenemではここに分布する菌株は認められなかった。 つぎに,beta-lactamase活性30mU/ml以下・MIC50ug/mlの範囲に分布する菌株では,beta-lactam剤耐性に外膜透過性の障害とpenicillin binding protein(PBP)の親和性の低下が考えられる。外膜透過性の障害はethylendiamintetraacetic acid disodium salt(EDTA)を用いて調べた。EDTA存在下でMICが1/4以下に低下した菌株はPCG,ABPC,CEZ,CCLおよびCFTM-PIで9〜13株認められた。しかし,PBPの親和性の低下については明瞭ではなかった。Bacteroides fragilisのbeta-lactam剤耐性ではPBP1と2が関与することが報告されているが,Prevotellaのbeta-lactam剤耐性ではPBPに関する報告はまだみられない。PBPの精製法と使用するラジオアイソトープの核種なども含めてさらに検討したい。
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