研究概要 |
舌は味覚器官であるが,動物種により舌の機能が異なることである。霊長類を除く一般の動物は,舌を摂食の道具として優先させている。しかし,ヒトは会話するという特殊な機能を持っている。この会話能力はヒト舌の分化に大きく影響しているのではないかと考えられる。このことがヒトの舌のみに存在する,分界溝や舌盲孔を生じる理由の1つではないかと考え,舌根部を含め組織学的研究と免疫組織化学的研究を進め次の結果を得た。 1.有郭乳頭の溝面に線毛細胞の存在し,純漿液腺とされているエブネル腺に粘液細胞(エブネル半月も確認)の存在すること。 2.ヒトの有郭乳頭の配列には舌盲孔が関係し,これまで分類されていた3型のV型は,Y型の変形であると思われること。 次に,ケラチンは上皮細胞を決定する重要な指標の一つとされていることから,抗ケラチン抗体を使用して,有郭乳頭と葉状乳頭間で味蕾内ケラチン線維に相違が有るのか,および,味蕾構成細胞間でケラチン線維が異なるのかを追求した。材料は,味覚舌乳頭の味蕾と口蓋の味蕾を中心に行い次の結果を得た。 1.味蕾と周辺上皮の間には,ケラチン抗体に対する明瞭に異なった反応が認められた。 2.K6抗体で味蕾内に一部陽性反応が見られたのは,味蕾周囲の細胞が分裂して味蕾細胞に置き変わったっている事を示すものではないかと推測された。 3.味蕾細胞は,基底膜から腔面に達する1個の細胞であり,まさしく短層上皮であると解釈すれば,K8,K18,K19に強陽性反応を示しても不思議ではないと考えられた。
|