研究概要 |
近年,無髄の1次求心性神経に含まれる神経活性物質がいくつか同定され,それらの分布等は詳しく研究されてきた.しかしながら,各物質の機能的役割は未だに明確ではない.特にsubstance P(SP)は古くからC侵害受容線維終末から放出される伝達物質の候補とされてきたが,最近,急性の痛みの伝達物質ではなく,慢性痛における伝達物質または侵害情報伝達の調節、あるいはその両者をおこなうことを示唆するデータが報告されている. 本研究は,NK-1レセプターアンタゴニスト(CP-96345)脊髄局所投与後における麻酔下ラット脊髄後角侵害受容ニューロン(特異的侵害受容ニューロン;NS,広作動域侵害受容ニューロン;WDR)の末梢刺激応答、特にC線維入力によると考えられる長潜時発射、の変化を調べたものである。 非ペプタイド性サブスタンスP拮抗薬の脊髄局所投与によりAδ成分の潜時の遅い部分が若干の減少傾向を示したのにたいし、C線維応答では顕著な抑制がみられた。投射ニューロンにおいては、非投射ニューロンに比べて、抑制を受けないニューロンが多く、抑制をうけたニューロンの抑制率も小さいという傾向が明らかであった。このことは、サブスタンスPによる侵害情報伝達の痛みの弁別的側面や情動面への関与が相対的に少ないことを示唆し、脊髄レベルの反射等に大きく関与するという従来からのインビトロの結果を支持するものではないかと考える。
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