研究概要 |
細胞が生理的に受ける外力に近いモデルとして,ナイロンメッシュに支持されたコラーゲン薄層に包理した培養細胞に機械的外力を反復負荷する装置を用いて実験を行って来た。今回はヒト歯根膜由来細胞を用いて,包埋するゲル濃度,ゲル変形量および外力の負荷期間を変えた場合の外力に対する応答性を,新生ラット頭蓋冠由来骨系細胞と比較した。コラーゲンゲルは新田ゼラチン社製0.3%セルマトリックスタイプIAを用い,最終濃度0.21または0.24%に調整した。厚さ約1mmのコラーゲンゲル薄層に包埋したそれぞれの細胞は,装置にセットし24時間静止状態で前培養した後,1Hzの反復周期でゲルを10%または15%伸展させる外力を,24時間から168時間負荷した。外力の負荷に伴う培養液攪拌の影響を除外するために,コラーゲンゲルを伸展させずに培養液中を水平移動するサイクリックコントロール群を設けた。実験終了後,一定面積のゲル薄層中のDNA量(Meyerらの方法),アルカリフォスファターゼ活性(Bessy-Lowry法)を測定した。また,細胞の形態と配列状態は通法に従って樹脂(JB-4)包理した2mum切片をトルイジンブルー染色して観察した。さらに,一部の試料ではナイロンメッシュの変形量と細胞の形態変化の関係を明らかにするために,外力負荷前後の状態を直接,微分干渉倒立顕微鏡を用いて観察した。外力の反復負荷により,両細胞とも分裂活性の上昇とアルカリフォスファターゼ活性の低下が見られ,また細胞は方向性をもって配列し,長い突起を伸ばしているのが観察された。しかし,歯根膜由来細胞の方がより強い外力の負荷を必要とする傾向にあった。微分干渉倒立顕微鏡による観察では,細胞がメッシュの伸展に伴って変形している様子が見られたが,メッシュ繊維との位置関係により伸展,圧縮,回転といった複雑な力が働いているため,今回は定量的に測定することはできなかった。
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