研究概要 |
本研究において、我々は、活性型ビタミンDの刺激によってマウス骨芽細胞で産生される新しい蛋白質を精製し、その構造決定により補体第3因子(C3)であることを見い出した(FEBS Lett.,285:21,1991)また、骨芽細胞におけるC3mRNAの発現調節を調べたところ、C3は活性型ビタミンDのみならず、局所性骨吸収サイトカインであるIL-1やTNFαによっても転写レベルで調節され、著しい産生亢進が促されることが明らかとなった(Endocrinology,129:2774,1991)。さらに、ビタミンD欠乏マウスを作成し、in vivoにおけるC3産生を調べたところ、活性型ビタミンDを投与すると骨でのC3産生が高まる一方、肝臓のC3産生および血中C3濃度は構成的に維持されており、活性型ビタミンDの投与によって変化しなかった。すなわち、骨組織におけるC3は骨局所で産生される因子であると結論された(Endocrinology,131:2468,1992)。そこで、骨髄ストローマ細胞や骨芽細胞の支持のもとで進行する破骨細胞の分化におけるC3の役割を検討した。その結果、C3レセプターは骨髄ストローマ細胞や骨芽細胞に存在すること、C3レセプターに対する中和抗体は培養系に添加すると、ストローマ細胞や骨芽細胞の増殖が抑制され、破骨細胞の分化も抑制されることが明らかとなった(Endocrinology,133:397,1993-。 さらに、マウスC3遺伝子をクローニングし、プロモーター領域の検索を行ったところ、活性型ビタミンDに応答する配列がイントロン部位に見い出された。従って、活性型ビタミンDは骨芽細胞あるいは骨髄ストローマ細胞に作用してC3遺伝子の転写活性を亢進させて、骨におけるC3蛋白の産生を促すことが示唆された。 以上の知見より、骨組織において、活性型ビタミンDにより骨芽細胞から局所的に産生されるC3は骨吸収と骨形成のリモデリングにおいて重要な役割を担っていることが明らかとなった。
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