研究課題/領域番号 |
05671568
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
病態科学系歯学(含放射線系歯学)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
田中 卓二 岐阜大学, 医学部, 助教授 (40126743)
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研究分担者 |
森 秀樹 岐阜大学, 医学部, 教授 (70021433)
吉見 直己 岐阜大学, 医学部, 講師 (30166996)
杉江 茂幸 岐阜大学, 医学部附属動物実験施設, 助教授 (60187648)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1995年度: 300千円 (直接経費: 300千円)
1994年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1993年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 分子病理解析 / 形質変化 / 癌化学予防 / 4-mitroquinoline 1-oxide / 口腔発癌 / プログレッション / 4-nitroquinoline 1-oxide / プロトカテク酸 / 化学予防 / ラット / 4-nitroquinoline l-oxide / フラボノイド / レチノイド / 遺伝子変異 / K-ras / Protocatechuic acid / GGT / GST-P / p53 / ki-ras |
研究概要 |
本研究は、我々が確立した4-Nitroquinoline 1-oxide(4-NQO)誘発ラット口腔癌モデルを用いて、口腔癌の発生過程を分子病理学的に解析するとともに、その発育・進展を阻害するいわゆる化学予防物質の検索とその阻害機構を明らかにし、一次癌・二次癌を含めた口腔癌の予防・治療に有用な基礎的資料を得る事を目的として行われた。実験は全て雄F344ラットを用いて行い、以下の結果を得た。 1.口腔前癌性病変、腫瘍のPCR-SSPC法による分子病理学的検索では、異形成で11%、乳頭腫で0%、扁平上皮癌で24%にHa-ras codon 61(A→T)に変異を認めたが、Ki-ras,N-ras,p53に変異はみられなかった。2.本モデルでは過形成→異形成→乳頭腫→扁平上皮癌という多段階の過程を経て癌が発生すること、さらに異形成、乳頭腫、扁平上皮癌にはGGT陽性、GST-P陽性などの形質変化がみられた。また、免疫組織化学染色でc-myc、c-fos、c-Ha-ras、c-erbB、p53の発現は弱いながら病変の進行とともに強くなる傾向がうかがえた。3.ヒトが日常摂取している食物中に存在する天然性化合物のうち、フェノール(プロトカテク酸、PCA)、フラボノイド(ヘスペリジン、クルクミン)、カロテノイド(β-カロテン、アスタキサンチン、カンタキサンチン)やタイ王国の食用野菜中に含まれるキサンチンオキシダーゼ抑制物質1'-acetoxychavicol acetateをイニシエーション相、プロモーション相に混餌投与すると口腔癌の発生を抑制することが判明した。同時に前癌性病変(過形成、異形成)の発生も抑制した。抑制メカニズムの検討では、被験物質投与により組織中のポリアミン量、BrdU標識率、AgNORs数の低下がみられ、細胞増殖の抑制が関与していることが明らかとなった。4.lndole-3-carbinolにはラット口腔癌、肝癌の発生抑制作用がみられることを報告しているが、自然発症ラット内膜癌の抑制作用もみられることを確認した。5.PCAには大腸癌、肝癌、胃癌、膀胱癌の抑制作用が、アスタキサンチン、カンタキサンチンには膀胱癌、大腸癌の抑制作用がみられることもラット発癌モデルで明らかとなった。6.合成レチノイドKYN-54やアロチノイドmofaroteneにも口腔癌発生抑制作用がみられ、細胞増殖抑制がそのメカニズムとして考えられた。7.PCAには強力なプログレッション抑制効果もみられた。8.以上の被験物質にはラットに対する毒性はみられず、ヒト口腔癌の化学予防物質として有用であることが示唆された。 以上の結果を踏まえ、今後は上記物質を用いた口腔癌の予防・治療のための臨床応用の検討とヒト材料による分子病理学的手法を加えたさらなる抑制メカニズムの検討を加えていきたい。
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