研究概要 |
1.薬物誘発性歯肉肥大の臨床評価について,本研究では高齢者入所施設(特別養護老人ホーム)において,痴呆症状の有無,慢性疾患と歯科疾患の状態とを対応させて,調査検討した.その結果,今回の調査で70歳以上の被検者にニフェジピン等によると考えられる歯肉肥大を伴うものはなかった.一方,胆道閉鎖症のため肝臓移植を受けた小児のうち,免疫抑制剤としてシクロスポリンを服用中のものには,副作用としての歯肉肥大を発現させている患者がいた. 2.ラットを用いて,ニフェジピンあるいはシクロスポリン誘発性の歯肉肥大について実験を行い,以下の結果を得た. (1)生後20日齢のラットにニフェジピンを経口投与すると,明確な歯肉肥大が誘発された.また,この系に齲蝕原性菌S.mutansを感染させたところ,歯肉組織は著しく肥大し,かつ腫張していた.一方,ニフェジピン非投与のラットでは,歯肉の肥大はみられず,感染群で炎症性の腫張が起こったに過ぎなかった. (2)ラットにシクロスポリンとニフェジピンを投与して,歯肉肥大の発現と年齢との関係を調べた.15日から60日の日齢の異なるラットに投与を開始したところ,いずれの薬剤でも若いラットほど肥大は重症になっていた.即ち,薬物誘発性歯肉肥大の発現と程度は,年齢に依存していることが明らかになった. 3.老化促進マウス(senescence accelarated mouse;SAM)にニフェジピンを投与したところ,ラットとは異なり明確な歯肉肥大は誘発されなかった.また,P.gingivalis由来のリポ多糖とE.coli由来のリポ多糖では,SAMの脾臓細胞に対するマイトジェン活性とポリクローナルB細胞活性化作用は,正常マウスに比べると,加齢に伴って著しく減退する傾向が示された.
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