研究概要 |
口腔及び顎骨の指標を用いて,高齢者骨粗鬆症患者の大部分を占める閉経後骨粗鬆症女性の早期診断の可能性を検討した結果、以下の知見が得られた。 1.定量的二重エネルギーコンピュータ断層撮影法(DEQCT)により得られた下顎骨皮質骨密度は,女性において加齢により減少傾向を示した。この傾向は閉経後に著明であった。また下顎骨皮質骨密度は,骨粗鬆症患者で骨折を起こしやすい椎体の骨密度と有意な相関を示した。このことから,下顎骨皮質骨密度測定は,骨粗鬆症診断の有用な診断手段となり得ることがわかった。 2.下顎骨皮質骨密度の代わりに,回転パノラマX線写真上の下顎骨下縁皮質骨厚(MCW)という,より簡便な指標を設定し,MCWと腰椎骨密度との関係を閉経後女性で検討した結果、有意な相関(r=0.48)が示された。特にMCWが0.22cm以下を示す女性では,骨粗鬆化による腰椎骨折の危険性が高いことが示された。 3.閉経後女性の口腔内の微候と潜在的椎体骨折の存在について検討した結果、残存歯牙数及び下顎骨歯槽骨吸収度について,胸椎骨折群と非骨折群との間に有意差を認めた。特に無症状の潜在的胸椎骨折を有する女性では、有しない女性より無歯顎者の割合(60%)が有意に多かった。 以上のことから,MCW値や残存歯牙数等の口腔内及び顎骨の指標により,無症候性の閉経後骨粗鬆症患者を早期に診断し得る可能性が示された。
|