研究概要 |
本研究の目的,、顎関節症患者にGd-DTPA造影剤を用いたDynamic MRIを施行して,関節円板後部組織内にみられる炎症性変化について定量的に評価することである。 対象:顎関節部疼痛,関節雑音,開口障害のいずれかの症状を訴え,臨床的に顎関節症と診断された96名(124関節)である。また、顎関節部に何ら症状のみられない27名を対照群とした。 方法:使用した装置はGE社Signaと両側性の顎関節専用サーフエ スコイルで、シーケンスはSpoiled GRASS法を用いた。造影前の矢状断画像を両側同時に切端位で作成した後、Gd-DTPA0.1mmol/kgを肘静脈より投与し,その直後から5分まで30秒間隔にて10フレームの撮像をおこなった。つぎに,下顎頭後上方の円板後部組織内にROIを設定して,各撮像時でのSignal intensity(SI)ratio【(造影後のSI-造影前のSI)/造影前のSI】を求め,臨床症状別にTime intensity curveを作成した。 結果:1.対照群,非症状群,関節疼痛群,関節雑音もしくは開口障害群におけるSI ratioの平均値は,それぞれ0.62±0.24(SD),0.78±0.44,1.53±0.69,0.73±0.38であり,疼痛群において高い造影効果を示した。2.疼痛群では他群に比較して,造影剤投与後早期より造影効果が認められピーク到達時間が短い傾向を示した。 このように,関節円板後部組織の造影効果は静脈叢の血管壁透過性亢進による造影剤の間質への漏出もしくは血管新生によるものと考えられ,炎症性病態が示唆された。 今後の検討課題は,関節円板後部組織における造影効果の高低と肉眼的および組織学的にみた炎症の程度とを対比することである。
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