研究概要 |
スケーラー刃部は繰り返しのスケーリング操作により,摩耗してくるのは当然のことである.スケーラー刃部が摩耗すると大きな力で操作せねばならず,歯面や根面に与える損傷も大きくなる.我々はこれまでスケーラーの耐摩耗性の向上を目的として,チタンイオンプレーティングの蒸着,ダイヤモンド粒子の電着を施したスケーラーを作成し,自動スケーリング操作装置によるスケーラー刃部の耐摩耗性について報告してきたが、さらなるスケーラーの耐摩耗性の向上を目指し,鋼やステンレス鋼製品の表層部を強化して,疲労強度を向上させるため主に工業会で行われている表面強化熱処理を応用するスケーラーを試作した.すなわち,焼入れ,焼戻し処理を行った市販スケーラーに対して,表面強化熱処理法の一種でガス軟チッ化に属するチッ化処理を施したものである.今回,この試作チッ化スケーラーと従来型およびこれまでで耐摩耗性に優れる結果を示したダイヤモンド電着スケーラーについて切削能率の比較検討を行った.また,熱処理時間を変化させた3種類の試作チッ化スケーラーについても比較試験を行ったので報告する. 自動スケーリング操作装置を用いた各種スケーラー耐摩耗性の測定結果は,S.T.スケーラーが他の2種類(N.T.およびDi.)のスケーラーに比べ,優れた結果を示した.特にN.T.スケーラーは1000ストローク以後,またDi.スケーラーにおいても4000ストローク以後,明らかな削除量の低下を示したのに対し,S.T.スケーラーでは5000ストロークを越えても十分な削除量を維持していた.この結果よりS.T.スケーラーの優れた耐摩耗性が示唆された. 熱処理時間の違う3種類のS.T.スケーラー(S.T.30,60,90)の比較試験においては,それぞれのスケーラー間に大きな削除量の差は認められず,窒化層の厚さによる耐摩耗性への影響は少ないものと思われた.
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