研究概要 |
近年,焼結貴金属に陶材を築盛焼成してクラウンを完成させる,ヘラテッククラウンとデグジントが考案された.これらは,ポーセレンジャケットクラウンと陶材焼付前装鋳造冠との中間的要素を持つもので,比較的短時間かつ容易に陶材冠が製作でき,冠橋義歯学の分野に大きな影響を与えるものと思われる.申請者らはこれまでに,これら焼結金属を用いた陶材冠の精度並びに強度の面で基礎的な検討を行ってきている.その結果,本方法によるクラウンは,従来の焼付前装冠と比べ強度が有意に低いことが明かとなった.陶材冠の強度向上には,クラウン外側部分の強化よりも,内側部分の強化の方が効果的であるという当教室での研究結果から考えると,これら焼結金属を応用した陶材冠の強度には貴金属層の強度,陶材と金属との接合強度の不足などが影響していると考えられた. そこで本年度は,これらについて詳細な検討を行った結果,各種焼結貴金属単体についてみると,引っ張り強度,弾性係数の違いがクラウンの強度に関与していることが示唆された.また,金属と陶材の接合様式に関しては,SEMおよびEDX観察の結果,ヘラテッククラウンは金属層と陶材とは単なる機械的結合のみであること,デグジントは焼付機構を有しているものの,焼付に関与するインジウムの分布が従来の焼付前装冠とは異なることが明かとなった. 今後は,焼結金属の利点を生かしつつ,十分な陶材冠強度が得られるような焼結金属の開発・研究を進め,またこれらの適合精度についても合わせて研究を進める予定である.
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