研究概要 |
本研究の目的は、根面う蝕や歯頚部う蝕などの治療に対して、従来のリン酸などの酸処理などを施さなくても象牙質と接着するボンディングシステムを開発し、その接着メカニズムを解明することである。 そこで、本研究は、151種のデンチンプライマー: Aプライマー(ヒドロキシエチルメタクリレート60wt%・蒸留水40wt%)、Bプライマー(Aプライマーに50種のアミノ酸0.5mole%をそれぞれ添加したプライマー)およびCプライマー(Bプライマーにピノメリットジメタクリレート10wt%をそれぞれ添加したプライマー)およびDプライマー(Bプライマーに4-アクリロキシエチルトリメリット酸10wt%をそれぞれ添加したプライマー)と2種の試作および1種の市販ボンディング材を用いて、SEM観察、IR分析および抜去牛歯象牙質に対する剪断接着強さ試験を行った結果、次のような結論を得た。 1. SEM観察とIR分析では、151種のプライマーで処理した場合、象牙細管内がスメアーキャッピングされ、管周象牙質が露出していて象牙質無機質成分の脱灰がほとんどなく変質が少ないことが分った。 2. 剪断接着強さでは、A,BおよびCプライマーと試作ボンディング材を使用した場合、2.5,2.5-6.0および6.4-10.8MPaであったのに対し、Cプライマーと市販ボンディング材を使用した場合、10.3-13.6MPaと高かった。しかし、Dプライマーと新しいボンディング材を使用した場合、9.5-30.2MPaとなり、Dプライマーの使用は、有効性があることが示唆された。 3. Dプライマーと新しいボンディング材を使用した場合の接着メカニズムは、接着界面に親和性の高いミクロタグから成る象牙質・レジン接着界面層が形成するために強い象牙質接着が得られるものと考えられる。
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