研究概要 |
ハイブリッド型フィラーの処理方法の検討に先立って,マクロフィラー(平均粒径5.8μm)を単独で用いてシラン処理濃度および熱処理温度がコンポジットレジンの機械的性質に及ぼす影響についての検討を行った。まず,シラン処理剤(γ‐MPTS)の濃度(0.5〜17%)が試作した光重合コンポジットレジンの機械的性質に及ぼす影響を調べた。この結果,処理濃度11%で圧縮強さは最大となり,間接引張強さは8%で最大となった。この濃度は,50〜70molecule/100Å^2に相当すると考えられる。次に,処理濃度(1,5,9,13%)と熱処理温度(50,70,90,110,130℃)が機械的性質に及ぼす影響を調べた。この結果,処理濃度が低い(1%)と熱処理温度の影響は小さく,処理濃度が大きくなる(5%以上)と110℃以上の熱処理で強度が低下した。また,処理濃度が13%で熱処理温度90℃のものが最も強くなった。 以上の結果をもとに,ハイブリット型フィラーの表面処理条件の検討を行った。本研究では,マクロフィラーの形状(無定形と球形),ミクロフィラーの配合率(10〜40%),フィラーの配合・処理方法の3条件を変化させて処理したハイブリッド型フィラーを用いて光重合コンポジットレンジを作製し,これらの条件が機械的性質に及ぼす影響を調べた。ただし,処理濃度はフィラー重量に対して9%,熱処理温度は50℃とし,この2条件は一定に保った。この結果,マクロフィラーの形状は,無定形の方が球形のものより強く,マクロフィラーとミクロフィラーは予め配合してからシラン処理したものの方が,マクロフィラーとミクロフィラーを個別にシラン処理してから配合したものより強度が大きいことがわかった。また,ミクロフィラー配合率では,30%が最も大きな圧縮強さを示し,これ以上の配合率で圧縮強さが小さくなることがわかった。間接引張強さは,ミクロフィラーの配合率が増加すると減少した。
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