研究概要 |
本年度は軟質裏装材の変色が材料の分子構造にどのような変化をもたらしているかをGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて,分子量分布,分子量測定から検討した.シリコーン系,アクリル系,ポリオレフィン系,フッ素樹脂系の各軟質裏装材のうち,o-ジクロロベンゼン(ODCB)に溶解したポリオレフィン系(1種類)と,テトラヒドロフラン(THF)に溶解したアクリル系(2種類)について分析を行なった.シリコーン系とフッ素樹脂系はこれらの溶媒には溶解しなかったため,今回は分析対象外とした.試験片はJIS K 6301に準拠した短冊状とし,試験溶液は予備実験で最も変色の著しかったインスタントコーヒー溶液とオリーブオイル液を使用し,コントロールとして生理食塩水を用いた.秤量瓶内に試験片を浸漬し,1,2,3ヵ月毎に試験片を少量切り出し,分析に供した.変色の測定はミノルタカメラ社製分光測色計CM1000を用い,変色の程度と分子構造との関連性を検討した.その結果アクリル系2種類は数平均分子量,重量平均分子量共に変化はなく,変色の程度と分子構造の変化には関係は見られなかった.ポリオレフィン系ではオリーブオイル液への浸漬で,数平均分子量,重量平均分子量共に1ヵ月目の測定より変化が現れ,油性成分の含浸により脂質の酸化吸収が分子構造の変化すなわち劣化を引き起こしているものと考えられた. 今回分析が不可能であったシリコーン系,フッ素樹脂系については,今後,赤外分光法,電子スピン共鳴法など他の解析方法を応用することによって対応する所存である.
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