研究概要 |
本研究は,顎関節において咬合圧に抵抗し,顎運動を円滑に行わせるように機能しているといわれているグリコサミノグリカンおよび機械的刺激に抵抗するコラーゲン線維が,精神的ストレスの過程でどのような変化を示すかについて検索し,その変化が顎関節の組織構築にどのような影響をもたらすかについて考察を加えたものである。また一般的にストレスに対してカルシウムの摂取が各種ストレス疾患に効果があると言われているが,顎関節症に対する効果はさだかでない。こういった点についても検討した。平成5年度ではSDラットに拘束ストレスを与え,顎関節の組織学的変化を生化学的ならびに免疫組織学的に検索した。その結果,正常群のラット顎関節の細胞外マトリックスの基本的な動態は,1)関節円板,下顎頭表層および骨組織にI型コラーゲンがみられ、軟骨部ではII型コラーゲンがみられた。2)コラーゲン量は加齢にともなって増加した。3)下顎頭表層にデルマタン硫酸が,下層にコンドロイチン硫酸とケラタン硫酸が多くみられた。4)加齢にともなってヒアルロン酸とコンドロイチン硫酸が減少し,デルマタン硫酸とケラタン硫酸が増加した。これに対して,拘束ストレスラットは,正常ラットに比べ基本的な細胞外マトリックスの構成はほぼ同じであったが,コラーゲン線維の微増とグリコサミノグリカンの全体量が減少していた。特に関節円板と下顎頭表層における質的変化が明らかに認められた。平成6年度では,拘束ストレスラットにカルシウムを過剰投与した場合の顎関節の組織学的変化を生化学的ならびに免疫組織学的に検索した。その結果,全ての検索法で拘束ストレス群とほとんど同様の結果がえられ,本実験では,カルシウム投与によるに特質すべき影響が観察されなかった。
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