研究概要 |
口腔癌に対して,その早期発見,手術療法,化学療法および放射線療法の治療効果のモニタリング,再発の予知などに有用な腫瘍マーカーが求められており近年種々の悪性腸瘍ならびに前癌病変でその活性が著明に増加することが,知られるようになった新しい腫瘍マーカーであるGlutathion-S-transferase-π(以下GST-π)を用いて治療の各時期における血漿GST-π値および血清SCC値を測定し検討した。その結果 1.口腔癌患者におけるGST-π値は健常人に比べ有意に高値を示したが,初発例と再発例の間には有意の差はみられなかった。 2.StageI,IIおよびStageIII,IVの2群に分けて検討するとStageIII,IVの進行癌群がGST-πの陽性率が高い傾向であった。 3.GTS-π値と原発巣の部位との関連は明らかではなかった。 4.放射線療法によりGST-π値の低下した症例が多かった。 5.手術後,多くの症例はGST-π値がcut-off値以下にあったが,術後に上昇傾向を示す患者はその多くが後に再発が生じた。 6.化学療法によるGST-π値の変化は症例により多様であった。 7.SCC抗原との比較では,GST-π値の方が,初発例,再発例ともに陽性率が高かった。 以上のことからGST-πは口腔癌患者の経過を観察するための指標になると思われた。
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