研究概要 |
口腔外科に関連する睡眠呼吸障害の発生状況を検討するために,通常の睡眠ポリグラフィーができない小児や術後患者でも容易に睡眠呼吸検査を行える生理学的な診断法として睡眠オキシメトリー法を開発した.この検査の測定項目で90%時間比(睡眠中のSpO2が90%未満の比率)は終夜睡眠ポリグラフによって得られる無呼吸低換気指数と強い相関があり,無呼吸低換気指数が10および20という診断基準は90%時間比では2%および7%に相当することがわかった.また,肥満,慢性的ないびき,扁桃肥大のない呼吸機能,鼻腔通気度ともに正常な10例から正常値を導いたところ90%時間比は0.004±0.008%であった.一方,咽頭気道形態分析による病因診断法を確立するため造影側方セファログラムによる咽頭気道形態の分析法を開発し,睡眠時無呼吸症候群の重症度と相関の高いパラメーターを独立変数として無呼吸低換気指数(AHI)を従属変数として多変量解析を行ったろころ,軟口蓋過剰量,平均咽頭気道径と上顎舌骨距離が睡眠呼吸障害に最も影響を及ぼす因子であり,ステップワイズ法にて(無呼吸低換気指数)=1.48×(軟口蓋過剰量)-2.63×(平均咽頭気道径)+32.6または(無呼吸低換気指数)=1.62×(軟口蓋過剰量)+0.98×(上顎舌骨距離)-74.9という二つの予測式を得た.そして,三次元グラフを描いて二枚のAirway Analyzing Chart(AAC)を作製し病因診断を簡便にした.そこで,この診断法を用いて口腔疾患に発生する睡眠時無呼吸症候群を調査したところ,口腔外科疾患では下顎後退症,クルゾン症候群,ピエールロバン症候群に,手術等では下顎後退術,口蓋形成術,顎間固定術に高頻度で閉塞型の睡眠呼吸障害が見つかり,口腔外科臨床に於いて非常にpopularな疾患であることがわかった.
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