研究概要 |
乳幼児をもつ母親の歯科保健行動の実態ならびに歯科保健に対するニーズなどについて把握するために,歯周保健に関する日常の行動や歯科保健についての認識レベルを評価するHU-DUIに,歯科保健に関するニーズや不安などの項目を加えた質問紙を作成し,妊娠初期,出産後4か月期,9か月期および1歳6か月期に郵送法によるアンケート調査を実施した。また,各時期ごとに母親と子どもの歯科保健に関する内容を盛り込んだ指導リ-フレット(アドバイス)を作成し,回答が得られた者に対してこれを郵送した。 対象は,広島市内全保健所において,平成6年2月から4月に妊娠の届け出をした妊婦1,468名であり,このうち4回すべてに回答が得られた614名について分析を行った。その結果,以下の知見を得た。 1.妊娠期からの母親自身のための歯科保健指導の重要性が示唆された。とくに,歯周疾患の予防という観点から,歯肉に対する関心を高めていく必要性のあることが示唆された。 2.母親への系統的な歯科保健教育により,母親自身の歯科保健行動レベルを高めることが可能であり,フィードバックの重要性が示唆された。 3.乳幼児をもつ母親の歯科健診に対する高い希望率など,歯科保健に対する母親のニーズの高さが示された。しかし,育児全般ならびに全身の健康の中に占める母親の口腔に対する関心の程度は低いことが示された。 4.母親の子どもの口腔に対する関心事が各時期において明らかになり,歯科保健指導プログラムを作成するうえでの大きな手だてとなり得ることが示唆された。 今後,本調査結果に基づき,母親に対する系統的な歯科保健指導プログラムを早急に作成する必要がある。
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