研究概要 |
ヒト乳歯歯根膜由来培養線維芽細胞(HPLF-Y),およびヒト永久歯歯根膜由来培養線維芽細胞(HPLF)にFlexercell strain unitを用いて培養5日目および10日目より,伸展度5%の機械的外力を24時間加え,増殖と分化に対する機械的外力の影響について検討した。さらにHPLFおよびHPLF-Yを同様の条件で培養し,24時間後より培地中に1,25dihydroxy vitamin D_3(D_3),およびretinoic acid(RA)を単独,あるいは同時に添加した。その後,D_3あるいはRA存在下で培養5日目および,10日目より5%の機械的伸展力を24時間加え,機械的外力への応答に対するRA,およびD_3の影響を検索した 増殖期にある培養5日目より,5%の伸展力を10秒間隔で3回/分間,24時間加えた場合,HPLFでは増殖の促進が認められた。また,同様の条件下においてはHPLF-Y,HPLFともにALP活性の有意な上昇が認められた。続いて両細胞を5nMのD_3および0.1μMのRA存在下で培養し,5日目,および10日目より,5%,10秒間の伸展力を50秒間隔で24時間加えた。その結果,培養6日目におけるD_3,RA非添加のHPLFでのみ機械的外力の負荷により,増殖が促進された。一方,両細胞のALP活性は,培養6日目においてHPLF-YではD_3,RA同時添加の場合にのみ,機械的外力によるALP活性の上昇が認められたのに対し,HPLFではcontrol群,D_3添加群,RA添加群,D_3とRA同時添加群の全ての場合で,機械的外力によるALP活性の上昇が認められた。培養11日目においては,HPLF-YではD_3添加群,およびD_3,RA同時添加群で機械的外力によるALP活性の上昇が認められたのに対し,HPLFではいずれの場合も外力の負荷による差は認められなかった。 本研究によりHPLFとHPLF-Yでは,機械的外力に対する応答性に差が認めれられ,歯周組織の形成や改造に関与する両細胞の役割の相違が示唆された。また,D_3およびRAは両細胞の機械的外力に対する応答を増強する効果が認められた。
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