研究概要 |
・基礎的検討の結果,as-トリアジンの5,6-ジクロロ置換体においては,5位の反応性が圧倒的に大きく,求核置換反応のみならず,遷移金属錯体触媒反応についても,5位に選択的な置換が起るので,多彩な誘導体合成の好適な出発物資となることを確認した。 ・3,6-シクロロ体についても,3位での位置選択性が明確に認められた。理論的説明にはなお検討の余地が残っているものの,これはas-トリアジンの化学では新知見である。 ・隣接部位が共に高い反応性を持ちながら位置選択性が明確であるという性質は,as-トリアジン5,6位に特有であり,このシステムは他のヘテロ環では殆んど見られないものである。この特徴を積極的に活用し,将来医薬品や農薬の探索に役立つ合成化学的基盤を用意しておくことを目的に,as-トリアジン縮環体の合成を検討し,チエノ,フロ,ピロロ-トリアジン環の有効な構築法を確立した。 この際,求核置換反応→触媒反応→閉環の順に合成を行なう方法で,ヘテロ〔2,3-e〕トリアジン体を,触媒反応→求核置換反応→閉環の順に行うことで,逆巻型のヘテロ〔3,2-e〕トリアジン体を,それぞれ作り分けるルートを開発した。 ・当初に予定した各種クロロ置換体の還元電位の測定とそれに関連する反応速度の測定については,時間不足のため,まとまって報告するのに値する結果を得るには至らなかったが,化学的には,本研究の過程で,as-トリアジンのユニークな性質に関する多くの新知見を得た。 それらの詳細は研究実績報告書(様式1)に記述してある.
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