研究概要 |
ヘテロ環化合物と生理活性作用とのかかわりは極めて重要である。筆者はこれまでにいくつかのプリン,ピリミジン,ピリジン等を含む新規ヘテロ環化合物を合成してきたが,なかでもセレンおよびイオウ元素を構成元素としたヘテロ環化合物は種々の試薬に対し反応性に富むことを見い出し,これを利用して骨格の変換や置換基の導入に成功してきた。本研究はセレンおよびイオウ元素の特性を利用してヘテロ環化合物を簡便に合成する方法を検討し、新しい生理活性物質探索の一助となることを目的とした。 筆者はまずセレン元素を含有する有機化合物としてセレナダイアゾール環を選び還元条件下に1,3-ジケトン類を反応したところ3one-potで種々のピロール環誘導体が形成される反応を見い出した。還元剤は種々検討したところ亜鉛と酢酸を用いる条件が最も良い収率を与えた。セレナダイアゾール環は1-amino-6-methyl-3-phenyl-4(3H)-pyrimidinoneを二酸化セレンを用いてジオキサン溶媒中での反応で容易に得られるので,この反応はピリミジノン誘導体からピロール環の新しい合成法となるものである。1,2,5-セレナダイアゾール体にアセト酢酸アニリド或はベンゾイルアセトンの様なかさ高い基換基をもつ1,3-ジケトン類を反応した場合はピロール誘導体の収率は低くなり,ピラジン環が形成されることを認めた。次にイオウ元素を含むチアダイアゾール体を合成し,亜鉛-酢酸存在下に1,3-ジケトン類との反応を検討した。この場合もセレン元素含有化合物の場合と同様ピロール環誘導体を与えたが収率は劣ることを認めた。 以上,セレン元素の特性を利用するヘテロ環化合物合成法の研究成果としてピリミジン誘導体よりセレナダイアゾール環を経由する新規ピロール環合成法を見い出した。
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