研究概要 |
1.環境・生体試料中の微量ニトロアレーン及び関連代謝物の測定を目的として,化学発光検出高速液体クロマトグラフィーの原理に基づくニトロアレーン分析計を開発した。これを自動車排ガス粉塵や大気粉塵に適用して,数mg以下の粉塵でも比較的簡単な前処理で1,3-,1,6-,1,8-ジニトロピレン(DNP)や1-ニトロピレン(NP)等を定量可能とし,更に微生物試料に適用して,還元代謝物(ニトロソ体,アミノ体等)との迅速一斉分析をも可能とした。 2.自動車排ガス粉塵中のDNP濃度は異性体による差は小さく,ディーゼル車とガソリン車の違いもほとんどなかったが,1-NPはDNP類より1〜2桁高濃度であった。DNPと1-NPのいずれも,総排出量は粉塵量が多いディーゼル車が圧倒的に多かった。 3.大気中濃度には季節変動(夏に低く冬に高い)と日内変動(朝晩に高い)が見られた。DNPは異性体間の差は小さく,1-NPはDNP類より約2桁高レベルで推移した。DNP及び1-NPの日内変動と自動車の走行台数,CO,NOxとの高い相関(いずれも相関係数0.905以上)より,これらの主要発生源が自動車であることが明らかになった。更に[Σ DNP]/[1-NP]比より,大気中DNP及び1-NP量に占めるディーゼル車の寄与はいずれも99%以上と計算された。大気変異原性に対する寄与は,いずれのDNP異性体でも少なくとも1-NPと同等もしくはそれ以上と計算され,DNPの大気内動態の把握の重要性が示された。 4.1-NP及びDNPは,S.typhimurium株,-S9mix条件で速やかに分解され,その速度はニトロリダクターゼ活性の強い株ほど大きいことが明かになった。このことより,環境中ニトロアレーンの軽減方法の一つとして,微生物の有望株が示唆された。
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