研究概要 |
平成5年度は過シュウ酸エステル化学発光検出・フローインジェクション法(FIA)を用いて血小板活性化因子(PAF)やコリン含有リン脂質を定量するための基礎的検討を行った。 1)ホスホリパーゼDとコリンオキシダーゼをアルキルアミンガラスビーズにグルタルアルデヒド法で固定化し,ステンレスチューブに充填後、カラムリアクター(IMER)として使用した。2)FIAシステム:キャリアー溶液には10mM硝酸コバルト及び0.1%Triton-Xを含むイミダゾール緩衝液(10mM,pH8)を用い,試料を注入後、IMERを通し、次いで化学発光試薬(0.4mM TCPO+0.5mM TMP in acetonitrile,50/50)と混和させ生じる発光を測定する。3)本法を用いて検量線を作成した結果、ホスファチジルコリン(PC),ホスファチジルコリン(C14:0)、リゾホスファチジルコリン(LPC)びPAFはいずれも200pmol/inj.までは良好な直線性を示し,各検出下限は1.84,1.76,7.69及び8.7pmol(S/N=2)と高感度であった。平成6年度はPAFおよび種々のリン脂質の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分離定量を中心に検討した。1)PAFやコリン含有リン脂質とコリンを含まないリン脂質(ホスファチジルエタノールアミン,PE;ホスファチジルセリン,PS;ホスファチジルイノシトール,PI)のHPLC分離を検討した。カラム:DAISOPAK-SP-120-5-APS,移動相;CH_3CN/MeOH/10mMNH_4H_4PO_4(pH5.8)=61.6/26.4/12(v/v/v,%)を用いた。2)HPLC分離後の各リン脂質の内,コリン含有リン脂質を分取し,減圧乾固後,残さに0.1%Triton X-100水溶液500μLを加えて溶解し試料とした。PC,PAFおよびLPCの検量線は8-160pmol/inj.の間で良好な直線関係を示した(r>0.996)。検出下限はそれぞれ1.6(PC),1.7(PAF)および2.9(LPC)pmol(S/N=2)であった。3)健常人血清中の総コリン含量を定量した。PS:SPM:LPC=70:20:10で作成した検量線より求めた濃度は,102-168mg/dLであった。これらの結果と,市販のキットでの測定値との相関はr=0.962と良好であった。4)健常人血清の各コリン含量リン脂質を定量した結果,健常人の成分比はPC80%,SPM15%,LPC5%であった。この結果は,既報のものと良く一致した。PAFは本法の感度下ではいずれの血清からも検出できなかった。以上,PAFおよびコリン含量リン脂質の高感度定量法を確立し,生体試料に適用することができた。本法は簡便で高感度であり、コリン含量リン脂質関連化合物の研究に有用であると考える。
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