研究概要 |
向流クロマトグラフィー(CCC)による分離・精製として,ヒト血清リポ蛋白質の3主クラス分離,DNA結合蛋白質であるsingle stranded binding protein(SSB),H-NSの大腸菌ホモジネートから1段階精製を検討した. まず,ヒト血清リポ蛋白質の向流クロマトグラフィーによる相互分離としては,polyethylene glycol(PEG)1000とリン酸カリウム緩衝液(KPi)からなる水性二相系の上層を固定相として,交軸型向流クロマトグラフ(X-axisCPC)のカラムに充填し,ヒト血清約4mlを下層で溶離すると,高密度,低密度リポ蛋白質(HDL,LDL)が溶出した.移動相を上層に変えると,血清蛋白質と超低密度リポ蛋白質(VLDL)が溶出し,HDL-LDL画分とVLDL-血清蛋白質画分とを相互分離できた.上記結果では,リポ蛋白質3種類の分離が達成されていないので,こんどは,向流クロマトグラフィーで分離したHDL-LDL,VLDL-血清蛋白質画分を濃縮し,ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを用いて,HDL,LDL,VLDL,血清蛋白質の4つの画分に相互分離した.これは,向流クロマトグラフィーと他のクロマトグラフィー系の組み合わせによる蛋白質の分離例として初めて行なわれた研究である. ついで,単鎖DNAに結合するSSBを大腸菌のホモジネートからCCCによる大量分取を検討した.X-axisCPCを用い,水性二相系には,各種,pH,濃度の異なったPEG-KPi,PEG-ammonium sulfateの系を用いてCCCを行なった.340mlのカラムに16%PEG 1000-17%(NH_4)_2SO_4の下層を充填し,CPCを500rpmで回転させながら,PEG-richな上層で大腸菌ホモジネートを溶離した.2つのピークが得られ,第2のピークとして溶出した画分(fraction51)にSSBが濃縮された.この画分をSDSPAGEで確認した結果,SSBの単一バンドが検出され,十分に精製されていることが分かった. 一方,H-NSに関しては,PEG-KPi系では分配係数が小さいため,上層を固定相にしたクロマトグラフィー系ではカラムに保持することができない.現在,他の系を用いて,検討中である.
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