研究概要 |
近年,生体内(内因性)物質を起源とする効力の極めて強い薬物が次々に開発され臨床的に使用されている.このような薬物には,従来の「最適投与計画設定法」の考え方はもはや適用できず,生体の持つ生理学的な要因,すなわち薬物受容体のDown Regulationや生体恒常系の日内変動の影響などを積極的に考慮した,新しい投与計画設定法の確立が待たれている.本研究は,この点を考慮した薬物投与計画設定法を確立することが目的である.(1)アンジオテンシン変換酵素阻害(ACEI)系降圧薬カプトプリル,(2)骨粗鬆症治療薬サケ・カルシトニン(sCT),そして(3)尿崩症治療薬アルギニン・バソプレッシン(AVP)について,それぞれ検討を行った.この要点は,投与計画設定の指標として,「血漿中薬物濃度」の代わりに,「薬理効果」と,「生体恒常系のモデル」を使用する点である.実験の結果,血圧,Ca,尿中Naのそれぞれの恒常系の日内変動は,当初考えていたよりも小さいが,外的に投与されたCP,sCT,AVPの薬理効果とその生体内動態は,これら生体恒常系の影響を強く受けること,従来の薬物速度論によって投与計画を算定することは,きわめて危険であることを明らかにした.一方,薬理効果を指標とし,生体恒常系を考慮した,「投与計画,bioavailabilityの算定法」は比較的有用であることを示し,特にCPのような通常の医薬品ばかりでなく,内因性生理活性ペプチドであるカルシトニンやバソプレッシンの投与製剤の評価にも適用可能であることを示した点,意義深い.この方法は,「生体恒常系のモデル化」を行っているため,種々の日内変動を組み入れた投与計画の変更には即時に対応できる.しかし,今回用いたCP,sCT,AVPとも,結果的には「生体恒常系の日内変動」の影響は小さく,その投与計画にほとんど影響しなかった.
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