研究概要 |
機能性マイクロカプセル(MC)調製のための高分子設計,高分子相構造設計,混合物処方設計,粒子設計を行った。 1.複合構造ラテックスによる微粒子コーティング:(1)サブシ-ブ領域微粒子コーティング用ラテックスの高分子特性を明らかにし,12:6:4 poly(ethl acrylate(EA)/methyl methacrylate(MMA)/2-hydroxyethyl methacrylate(HEMA))を芯に,6:12:8 poly(EA/MMA/HEMA)を殻とするコアーシェル型ラテックスを開発した。(2)外層にNIPAAmをグラフト化したコアーシェル型複合構造ラテックスは、微粒子への良好な被覆操作性自己成膜性,温度応答性放出を示した。 2.多機能性レシチン膜MC: (1)短時間遅延・制御放出・体内消失特性を持つ膜剤処方として,大豆レシチン(SL)-コレステロール(CH)-テアリン酸(SA)-ポリビニルプロリドン(PVP)混合系を見いだした。各成分がMC膜の相状態に及ぼす効果を,熱分析,X線回折,等温偏光顕微鏡観察より検討して相図を明らかにした。(2)組成,膜厚,レシチンの種類を変えることにより,in vivoでの制御が可能な広範な特性を持つMCが得られることを明らかにした。 3.中性子補足療法用MC: (1)ガドリニウム(Gd)のDTPAキレート化合物にステアリルアミンを結合した疎水性化合物Gd-DTPA-SAm及び膜剤に9:9:4 poly(EA/MMA/HEMA)を用いて,平均粒子径52μm,薬物含量38.4%,60日間Gd溶出率0.23%のMCが調製でき,中性子補捉療法用デポ製剤としての利用が可能になった。(2)Gd-DTPA-SAmを29.3%含有するSL膜MCのラット肝動注は,2週間以上の長期にわたり肝臓内に投与量の41.6%のGdを滞留させた。また,このSL膜MC肝動注時の肝組織障害性を生化学的組織学的に検討し,適切な製剤特性と投与法を選択すれば,正常組織の致命的な障害を回避した有効な肝癌治療が可能であることが示唆された。
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