研究概要 |
本年度は以下の検討を行った。1)七面鳥オボムコイド(OMTKY)よりドメインを単離精製する、2)単離したドメインを固定化し、光学認識能を精査する、3)糖鎖含有ドメインと糖鎖フリードメインの光学認識能の比較より光学認識における糖鎖の役割を検討する、4)NMRを用いて光学認識サイトを明らかにする、5)分子モデルを用いるコンピューターシミュレーションによる結合サイトの検討を行う。 七面鳥の卵白より常法に従ってOMTKYを単離した。次に、Staphlococcus aureus Strain V8を用いて、単離したOMTKYのドメイン間のコネクションペプチドを切断した。その結果、セカンドドメイン(OMTKY2)、糖鎖フリーサードドメインおよび糖鎖含有サードドメイン(OMTKY3およびOMTKY3S)を単離することができた。得れた各ドメインをN,N′‐disuccinimidyl carbonateで活性化したaminopropyl‐silicagelに固定化し、内径4.6mmおよび2.0mm、長さ100mmのステンレスカラムに充填し、光学分割能を検討した。OMTKY3を固定化したカラムは、ベンゾジアゼピン系化合物(lorazepam、clorazepate)および2‐アリルプロピオン酸誘導体(pranoprofen、U‐80,413)に対して光学認識能を示した。これらの化合物はOMTKY3およびOMTKY3Sカラム上でほぼ同等の保持を与えた。一方、エナンチオ選択性はOMTKY3カラムのほうがわずかに優れていた。サードドメインでのこれらの化合物の光学認識に糖鎖は関与していないことを示唆している。一方、OMTKY2カラムは、検討した化合物に対して認識能を示さなかった。 OMTKY3におけるこれらの化合物の光学認識サイトを明らかにするため、ニワトリオボムコイドサードドメイン(OMCHI3)でのこれら化合物の滴定およびOMCHI3との複合体のNuclear Overhauser Enhancement Spectroscopy(NOESY)データを得た。その結果、これらの化合物はVa16、Phe53、Leu23およびLys34と相互作用をしているのではないかということが示唆された。また、U‐80,413エナンチオマーの結合定数は、2.5×10^3および1.7×10^3であると算出された。OMTKY3とOMCHI3のアミノ酸配列は、3残基が異なっているだけで、上記の推定結合サイトのアミノ酸配列は同等であることから、OMTKY3においても同様の相互作用をしているものと推定した。分子モデルを用いるコンピューターシミュレーションによる結合サイトは、上記結果を支持した。
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