研究概要 |
c-myc遺伝子上のDNA複製開始と転写エンハンサーであるHindIII-PstI(H-P)領域core配列に c-mycと複合体形成するタンパク質MSSPは一本鎖及び二本鎖DNAに塩基配列特異的に結合し、そのMSSP1,2のcDNAクローニングに成功した。MSSP-1,2はRNPコンセンサス配列を有していた。発現はc-mycとの協調発現、すなわちc-myc発現がある臓器、細胞周期においてはG1→S期に発現していた。更にDNA複製と転写調節因子であることが明らかとなった。また、SV40 DNAのDNA複製開始必須領域に存在するAT rich配列に結合するタンパク質として同定したSOAPと同一または極めて類似のファミリータンパク質と考えられる。現実にSV40 AT rich配列をMSSP/c-myc結合配列TCTCTTAに置換した配列はSV40系で機能し、更にMSSPにより複製活性増加が観察された。hsp70遺伝子上で現実に機能しているDNA複製開始領域を同定したところ、プロモーター上のHSPmycA,HSPmycBを含む領域と重複し、現実にこの領域に塩基置換を導入した配列は自律増殖能を示さなかったことより、このc-mycタンパク質複合体結合配列の重要性が確認された。次にhsp70遺伝子のc-mycによる転写調節機構を検討した。c-mycは定常状態で存在している場合はHSPmycB配列は極めて高い転写能を有していた。一方、c-mycが大過剰の場合は逆にHSPmycA,HSPmycBの存在の有無にかかわらず、基本的なTATA Boxが存在すると転写抑制を示した。このことはG1期ではHSPmycB配列を介してのc-mycによる転写促進が働くが、S期においてはc-mycタンパク質は転写複製開始複合体に作用して転写を抑制し、DNA複製をONとして複製へと移行すると考えると興味深い。
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