研究概要 |
海洋細菌Vibrio alginolyticusの細胞質膜から精製したNADH-キノン・リダクターゼ酵素複合体はα,β,γの異なる3種類のサブユニットで構成されている。これらのサブユニットをSDS-PAGEによって分離精製し、そのN末端アミノ酸配列を決定した。また、各サブユニットをV8プロテアーゼによって限定分解し、得られたポリペプチドを精製し、そのN末端アミノ酸配列を決定した。これらの情報に基づいて、各サブユニットに対応する遺伝子(NQR A,B,Cと命名)の一部をPCR法によって増幅するためのプライマーとなるDNAを合成した。V.alginolyticusのクロモソームを鋳型とし、合成したプライマーを用いてPCR法によりNQR A,B,C遺伝子の対応する部分を増幅した。一方、V.alginolyticusから得たクロモソームDNAを部分的にSau3AIで消化後、10-20kbpの断片を分画し、これをλDASH IIアームに繋ぎ、パッケージした。NQR遺伝子を含むラムダ・ファージはジゴキシゲニンでラベルしたPCR産物(A,B,Cプローブ)を用いてプラークハイブリ法でスクリーニングした。陽性のラムダ・ファージは制限酵素で消化後、NQR遺伝子を含む部分をpUC118または119に繋いだ。プローブCで選択したクローンの中に、βサブユニットを発現するクローンを見いだすことができた。βサブユニットの発現は大腸菌TG1にクローニングしたプラスミッドを導入し、増殖して得た菌体から膜分画を調製し、界面活性剤存在下にゲル電気泳動を行ない、これをNADHとメナジオンおよびMTT色素による活性染色によって確認した。さらに、βサブユニット特異的な抗体により染色し、ゲル上の位置が合致することを確かめた。この方法により、NQR B遺伝子はNQR C遺伝子の下流に存在することが確認された。
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