研究概要 |
HIV-1逆転写酵素(RT)は周知のとおりRNAを鋳型にDNAを合成する酵素である。HIVの易変異原性はHIV-RTの基質識別のあいまいさに起因する。HIV-RTは核酸塩基の中でも特にピリミジン塩基に対して基質識別あいまいでUracil,Thymine,Cytosineの変異率が高い。申請者らはこのピリミジン塩基に注目し,ピリミジン様化合物として各種ジケトピペラジン及びピラジン化合物を選び,HIV-1感染細胞及び非感染細胞に投与し,こうHIV活性を調べた。13種のジケトピペラジン化合物(サイクロセリル-セリン,サイクロアラニル-アラニン,サイクロアラニル-グリシン,サイクロアラニル-ヒスチジン,サイクローD-アラニループロリン,サイクロアラニル-セリン,他のサイクロジペプチド)を入手し,これら化合物の細胞毒性試験をHIV未感染細胞(CEM,U937,H9,Molt-4)を用いて調べ,次にHIV感染細胞の6種の実験室株式会社(CEM/LAV,CEM/LAV-1,U937/IIIB,U937/RF,H9/MN,Molt-4/IIIB)に対する細胞毒性を調べた。これら調べられた化合物のうち,サイクロセリン及びその誘導体がHIV感染細胞株(CEM/LAV-1)について選択的毒性を示した。現在他のHIV感染細胞株に対する効果及び抗HIV活性の作用機序を逆転写酵素活性測定法の非アイソトープ法(非RI,ELISA法)を確立して追及中である。 これら偽核酸誘導体の新たな作用として,HIV-1DNA,特に調節遺伝子と核酸結合タンパク質との相互作用の可能性を支持する結果が得られた。そこで,ゲルシフトアッセイ系を構築し、さらに研究を進めている。
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