研究概要 |
本研究の目的はアレルギー性臓器炎症(特にアレルギー性気道炎症、関節炎および腎臓炎)の発症機序および治療薬の免疫薬理学的研究を行うことである。しかし、これまで、薬理学的研究に有用な疾患モデルが開発されていないことや治療薬の研究が免疫抑制薬やステロイド薬などの非特異的な薬物にかたよっていた点など問題点があり研究が大きく遅れていた。そこで本研究ではまず第一にアレルギー性臓器炎の疾患モデルの研究を行い、ついで、発症に特異的に役割を演じるメディエーターの検索からそれらに特異的な抑制薬の研究を行った。これまでの研究で最も成果の上がった分野はまず、気道炎症についてであり、特に、気道炎症による気道過敏性モデルについてはモルモットおよびマウスに良いモデルが作成できた。さらに、今回の研究ではそれらのモデルを用いてトロンボキサンA2およびインターロイキン5が発症に関与することを見いだし、それぞれの抑制薬あるいは抑制物質の臨床的意義について検討を行なった。それらの成果をClin.Exp.Allergy23 32-38,1993、J.Pharm.Pharmacol.45,286-291,1993、Life Science 53,PL 243-247,1993、J.Pharm.Pharmacol.46,876-882,1994などに発表した。さらに、アトピー性皮膚炎モデルをマウスに作成した。このモデルは発症機序および臨床症状がヒトのそれと類似するが経過が一過性である。このような点では若干改良点があるがこのモデルを用いて発症因子の検討を行なったところtumor necrosis factor(TNF)が重要な働きをすることを見いだした。この成果はLife Science 54,PL 291-295,1994に発表した。さらにアレルギー機序による関節炎モデルの作成と発症に関与するメディエーターの研究を重点的に行っているがその成果についてはいまだ公表していない。これらの成績はアレルギー性臓器炎症治療薬の研究に今後大きな示唆を与える多くの重要な知見が得られた。
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